ベッドサイドで実験する人たち①

ほとんどの病院には必ずと言って良いほど、ベッドサイドで「実験」をしている医師がいます。ここで言う実験とは、

「標準的治療とはおよそかけ離れた診療」

ということです。我々が日常的に行っている診療内容、教科書に書いてある治療法は、とくに疾患に特異的な治療法(急性心筋梗塞に対するバイアスピリン、外傷性ショックに対するトラネキサム酸など)については、過去にさまざまな検証を経てその地位を確立してきました。理想的には、あらゆる治療が質の高い検証に耐えてきていれば良いのですが、中には欠点を指摘されつつも臨床使用には耐えうるとして現代の医学に取り入れられたものも多いことでしょう。

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ガス分析と低Na血症③

先の説明の通り、間接法では血清サンプルを水で希釈してから測定に回します。

希釈の程度は20倍や30倍といった単位ですから、水で希釈されたサンプルは、そのほとんどが「水分画」になります。よって電極法にしろ炎光法にしろ、この希釈サンプルの濃度を測定すると、得られたNaイオン濃度はほぼ希釈後の「水分画」中の濃度と言って差し支えありません。そして、20倍に希釈したら、得られた希釈液の濃度を20倍に変換してもとのサンプルの濃度として報告するわけですが、ここで問題が生じます。

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ガス分析と低Na血症②

説明をわかりやすくするため、②の間接法×電極法から解説します。

②間接法×電極法

間接法では、血液をスピッツに入れた後、凝固して沈殿した血球成分+凝固因子を除いた「上澄み=血清」を測定器にかけます。このとき、生化学検査で調べたい項目は、当然Naイオン濃度だけではありませんので、Naイオン濃度の測定に用いられるのは上記血清のうちごく一部だけです。この少量サンプルに電極を差し込んで測定したいのですが、その際、このサンプルは水により希釈されます。なぜ希釈が必要なのかと言うと、サンプルの必要体積の問題のほかに、希釈することでNaイオン濃度がより正確に測れるためだと考えられます。

なぜ、希釈によりNaイオン濃度がより正確に測れるのか?

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敗血症性ショックの補助的薬剤と減量順序

敗血症性ショックの際に、主に循環動態の維持、改善を目的として、2020年現在は以下の3種類の薬剤が投与されることが多いと思います。

ノルアドレナリン  必要量 mcg/min
ハイドロコルチゾン 200 mg/day
バソプレシン    〜0.03 U/min

これらの薬剤の投与のタイミングや投与目的については成書、ガイドラインを参照してもらうこととして、ベッドサイドでよく質問されるのは「これらの薬剤をどのように減量していくか」という点です。

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腎機能過剰亢進

60/40 mmHg

250/180 mmHg

これらの血圧はどちらも異常であり、数値の上昇と低下は、現場では「病的」と捉えられます。しかし、腎機能については「低下」だけが異常として広く認知されており、我々は腎機能の低下の度合いに応じて様々な薬剤の投与量を減量、あるいは投与間隔を延長します。実は冒頭の血圧の例に似て、GFRで表される腎機能が「上昇」し、正常範囲を逸脱する現象が重症患者では時々みられます。

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RCTは真理という診断に近づくための検査である①

第1回.ランダム化比較試験の「感度」「特異度」

ある日の院内勉強会で、我々は「NIVAS trial」という、腹部術後にICUで急性呼吸不全を発症した患者にNIVを装着することで、通常酸素投与を行うよりも再挿管率を下げられるか、ということを検証したランダム化比較試験(RCT)を題材にジャーナルクラブを行った。その後主催側である我々は、サンプルサイズについての解説を参加者に行っていた。その席でαエラーとβエラーについて、最後まで数人で残って議論している時、とても興味深いことに気が付いた。それは、

「RCTとは、真理に近づくための「道具」である」

ということだ。何のことを言っているのか、と思われることだろう。

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