呼吸と心拍出量

Q. この患者の呼吸は自発呼吸、強制換気のいずれか


呼吸による心拍出量の変化は、次の3つの側面から説明される。

①右室への静脈還流量の変化
②肺血管床の容積変化
③左室の後負荷の変化

①右室への静脈還流量の変化

胸腔内圧が相対的に低くなると、胸腔外から胸腔内への静脈血還流量は増加する。

自発呼吸時:吸気時に還流量増加 呼気時に還流量減少
強制換気時:吸気時に還流量減少 呼気時に還流量増加

吸気時に増加した右室への血液還流は、肺循環を通ったのちに左心系へと進み、呼気時の心拍出量増加に寄与する。

②肺血管床の容積変化

肺胞の拡張様式(吸気の様式)によって、肺血管床は虚脱、拡張のいずれかを呈する。

自発呼吸時:胸腔内圧の低下による肺胞の拡張が肺血管床の拡張をもたらす
強制換気時:胸腔内圧の上昇による肺胞の拡張が肺血管床の虚脱をもたらす

肺血管床の虚脱/拡張により、肺循環系から左心系へと血液移動量を変化させ、左室の心拍出量増加を即時に増減させる。

③左室の後負荷の変化

胸腔内圧の変化によって左室壁外の圧も変化する。

自発呼吸時:吸気時に胸腔内圧が低下→後負荷増加
強制換気時:吸気時に胸腔内圧が上昇→後負荷減少

後負荷の増減は、左室の心拍出量を即時に増減させる。


①右室への静脈還流量の変化
②肺血管床の容積変化
③左室の後負荷の変化

②と③は左室の心拍出量に即時の変化をもたらすが、①の結果が左室の心拍出量となって表れるのには少しタイムラグ(呼気→吸気、吸気→呼気)があるということである。結果的に①〜③を重ね合わせると、

自発呼吸時:吸気時に心拍出量が減少
強制換気時:吸気時に心拍出量が増加

となる。これらは輸液反応性の概念を理解する上でも非常に重要である。

吸気に引き続いてAラインの曲線下面積が縮小している

冒頭のモニターでは、インピーダンスから読み取れる吸気相に心拍出量が減少している。したがって患者は自発呼吸をしていることがモニターを見ただけで読み取れる。

下は強制換気中の患者のモニターである。

吸気に伴いAラインの曲線下面積が増加している

このような、呼吸による心拍出量へのダイナミックな作用はHeart-lung interactionとよばれる。

Heart-Lung interactionについての動画はこちら

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