胸痛。壁運動の低下領域はどこか?
呼吸困難、血圧低値。みられる所見はなにか?
腹痛。みられる異常はなにか?
腹腔内液体貯留(Douglas窩)
Douglas窩の観察は、FASTの中で女性の腹腔内出血の検索を目的に行われ、男性では膀胱直腸窩が観察部位となる。少量では子宮背側と直腸の間にエコーフリースペースとして観察され、量が増えると子宮の頭側や膀胱周囲にもエコーフリースペースが観察される。この画像のように、圧迫を加えることで形状が変化するのが特徴である。(関連動画:#97)
血圧低下。みられる異常はなにか?
心嚢液貯留
心嚢液貯留の評価の基本は心窩部からの四腔像で行うが、心タンポナーデか否かは心嚢液貯留の有無だけでは判断できない。特異度の高い所見は右心室の拡張初期の虚脱であるが、これを直接確認する方法としてこの画像のように傍胸骨長軸像でMモードを用いる方法がある。Mモードのラインを右室自由壁および僧帽弁前尖に合わせ、僧帽弁の開放時に右室自由壁がどの方向に動いているかを見ることで心タンポナーデの病態が生じているかを知ることができる。この例では僧帽弁の開放に一致して右室自由壁は画面上方に移動しており、心タンポナーデとする根拠は得られない。ただしこの所見の感度は必ずしも高くないため、総合的な解釈と注意深い経過観察が必要である。(関連動画:#4, #45, #65, #86)
救急外来。呼吸困難。みられる所見はなにか?
Lung slidingの消失、Hepatization
肺エコーにおいて、Lung slidingの消失は気胸の除外に有用な感度の高い所見であるが、一方で特異度はやや低く、胸膜癒着や換気量低下、無呼吸状態ではLung slidingは目立たないこともある。この例では、肺炎により胸膜直下の含気が失われ、呼吸による臓側胸膜の動きがほとんど消失してLung slidingが確認できない。このような場合、Lung pulse signがみられれば気胸の除外に有用であるが、この例ではそれも明瞭ではない。コンベックスプローブで観察すると、下の画像のようにDynamic air bronchogramを伴うHepatizationを生じていることがわかり、気胸とは異なる病態であることが理解できる。(関連動画:#8, #72)
心肺停止。みられる所見はなにか?
心静止(または真のPEA)、心嚢液貯留
心肺蘇生時の超音波の役割は未だ確立していないが、補助的に用いることで原因や予後の予測に活用できる可能性がある。波形確認では、心静止を”fine VF”と見誤らないように感度やリード、誘導を確認することが必要であるが、超音波を用いることでも視覚的に心静止と心室細動を区別することができる。この例では心筋の運動は一切観察されず、心静止(またはPEA)の状態が確認できる。心嚢液の貯留は非外傷性であれば急性大動脈解離による心タンポナーデを示唆し、バイタルサインが消失した状態では蘇生を中止する指標となり得る。超音波の使用により胸骨圧迫の中止時間が延長したり、質が低下したりしないよう十分に注意して実施することが求められる。(関連動画:#21, #90)
救急外来。腹部打撲。みられる所見はなにか?
精嚢
膀胱直腸窩の観察は、FASTの中で男性の腹腔内出血の検索を目的に行われ、女性ではDouglas窩がこれに相当する観察部位となる。膀胱と直腸の間隙のエコーフリースペースを検索するが、このときにビームを尾側に向けていくと一対の低エコー領域が膀胱背側にみられる。これは精嚢であり、圧迫を加えても形状が変化しない点が腹腔内液体貯留とは異なる。(関連動画:#93)
右上肢の腫脹と発赤、熱感。考えられる疾患はなにか?
蜂窩織炎
軟部組織感染症を疑う際に、膿瘍形成の有無の評価のために超音波を用いることができる。身体診察上は膿瘍の有無を正確に判定することは難しいが、超音波であればドレナージ可能な液体貯留の有無を評価することができ、治療方針の変更につながる。単純性の蜂窩織炎では皮下組織の浮腫が画像のように敷石状に描出される。膿瘍形成が疑われる際、部位によっては血管病変と見誤る可能性もあるため、その場合はカラードップラーを用いて内部の血流の有無を確認する。(関連動画:#33)
救急外来。下腹部痛。みられる所見はなにか?
子宮内妊娠
妊娠可能な年齢の女性が腹痛で来院した際には、妊娠反応検査の提出が必須である。妊娠が確認された場合、世界標準的にはβHCGの定量試験と経膣超音波による胎嚢の確認により方針を決定するが、本邦における救急外来診療では非産婦人科医が産科的診察や経膣超音波を独立して実施することは稀である。経腹超音波による胎嚢の感度は経膣超音波に劣ると考えられ、経腹超音波による標準的診療法は確立していないと言ってよい。この例は切迫流産の状態と考えられ、他の腹部疾患の可能性も検討した上で産婦人科医による評価を要する。

