ノルアドレナリン、投与速度、γ

Q. ノルアドレナリンが末梢静脈路から輸液ポンプで 10mL/h (5%ブドウ糖液100mL+ノルアドレナリン1mg 3アンプル)で投与されて いる。体重が 50kg のとき、その投与速度は何γか


ノルアドレナリンの点滴組成は病院ごとに異なったものが採用されています。私がいままで見てきたものには次のようなものがありました。

溶媒50mL+ノルアドレナリン3A ・・・①

溶媒50mL+ノルアドレナリン5A ・・・②

溶媒100mL+ノルアドレナリン3A ・・・③

溶媒100mL+ノルアドレナリン6A ・・・④

①と④は濃度としては同じですが、前者はシリンジポンプで投与されることが多く、後者は輸液ポンプで投与されます。

組成については特に推奨というものはありませんが、薬剤の性質上、最も重要なのは投薬エラーが起こらないことです。もしERとICUで採用している組成が異なっていたら、引き継ぎ時に混乱が生じて治療に重大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。院内で採用する点滴組成は、ノルアドレナリンに限らず統一されていることが望ましいと言えます。過量投与、過小投与されたときに即時に重大な影響をおよぼす薬剤は特にそうです。こうしたことは多くありませんが、気がつくところでは術後の硬膜外麻酔に入っている局所麻酔薬やオピオイドの量が麻酔科医によって異なっているのはよく見かけます。普段自分が行き来の少ない部署からの薬剤の持ち込み時には、その組成にはいつも以上に注意を払う必要があります。

次に各組成の優劣についてですが、さきほど「特に推奨はない」と述べましたが、実際にはおすすめの組成があります。

溶媒50mL+ノルアドレナリン3A

溶媒100mL+ノルアドレナリン6A

これらの組成は、ある理由によりほかのものよりも優れていると言えます。ノルアドレナリンの投与速度としては、mcg/kg/minすなわち本邦ではγ、あるいは最近では/kgはあまり用いられなくなり、mcg/minで表記されることが多くなりました。一方で、輸液ポンプやシリンジポンプの流速表示はmL/hで表示されています。いま、上記濃度組成のノルアドレナリンが10 mL/hで投与されているとすると、

10 mL/h = 0.6 mg/h = 600 mcg/h = 10 mcg/min
(溶媒は厳密には106mLですが100mLと見なします)

となり、ポンプにmL/hで表示された数字がそのままmcg/minで表されるノルアドレナリンの投与速度となります。もしγとして知りたければ体重で表示数を除せばよいので、ベッドサイドでは非常に直感的に解釈することができます。

私の勤める病院では、中心静脈路から投与される場合は④の組成を、末梢静脈路から投与される場合は血管外漏出時の有害事象を懸念して③の組成をそれぞれ採用しています。ですので、たとえば末梢静脈路から10 mL/hで投与されていた場合は、濃さが1/2ですので5 mcg/minということになりなす。

ちなみに、γという表記方法は日本ではmcg/kg/minのことを表す意味で用いられていますが、これは日本特有の表記ですので諸外国では全く通じません。使用は国内にとどめておきましょう。


・ノルアドレナリンの組成は院内で統一が望ましい

・100mLに6mgの組成にすると計算が楽(mL/h = mcg/min)

・「γ(ガンマ)」が通じるのは本邦だけ


Q. ノルアドレナリンが末梢静脈路から輸液ポンプで 10mL/h (5%ブドウ糖液100mL+ノルアドレナリン1mg 3アンプル)で投与されて いる。体重が 50kg のとき、その投与速度は何γか

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