ベッドサイドで実験する人たち②

②「臨床研究の副次的結果」に基づく診療

臨床研究、特にその最高峰であるランダム化比較試験(RCT)では、その研究で検証しようとしている仮説(primary outcome)が設定され、その研究は基本的にその仮説以外に得られた結果については差のあるなしについての結論を下すことはできません。「死亡率」を比較したRCTで「人工呼吸器装着日数」に差があったとしても、「人工呼吸器装着日数に差があるかもしれない」という風にしか言えません。その研究は死亡率に差を見出そうとして規模が設定されており、人工呼吸器装着日数に差を見出すためにはまた別の規模の研究を設定しないといけないからです。

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ベッドサイドで実験する人たち①

ほとんどの病院には必ずと言って良いほど、ベッドサイドで「実験」をしている医師がいます。ここで言う実験とは、

「標準的治療とはおよそかけ離れた診療」

ということです。我々が日常的に行っている診療内容、教科書に書いてある治療法は、とくに疾患に特異的な治療法(急性心筋梗塞に対するバイアスピリン、外傷性ショックに対するトラネキサム酸など)については、過去にさまざまな検証を経てその地位を確立してきました。理想的には、あらゆる治療が質の高い検証に耐えてきていれば良いのですが、中には欠点を指摘されつつも臨床使用には耐えうるとして現代の医学に取り入れられたものも多いことでしょう。

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レバミピド

「ロキムコ」

いま勤めている病院に赴任して、この言葉を初めて耳にしました。当初は「何のことだろう?」と思っていましたが、これまでにもロキソニン(ロキソプロフェン)とムコスタ(レバミピド)を同時に処方している医者を目にしたことは他の病院でもありました。ところが、この病院では、ERでロキソニンを単剤で処方しようとすると、看護師さんまでもが

「ロキソニンだけで良いですか?」

「ムコスタは良いですか?」

などと聞いていくるので、大変驚きました。この病院では、看護職領域にまで、ガラパゴス化した診療が浸透しているのです。

ロキソプロフェンとレバミピドを同時処方する場合、恐らくは胃粘膜の保護作用を期待して処方しているのでしょう。自分が処方したNSAIDのせいで、患者さんが後日吐血して入院になってしまったら、それは嫌な気持ちになります。では、当のレバミピドには期待されるような効果があるのでしょうか?

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