心の柔軟性

病気になったとき、そればかりに心が囚われてしまうことがある。病気でなくても、ちょっとした体の不調がやけに気になってしまうことを我々は経験する。それは一見、病気そのものが大きな問題であるように見える。だが実際には、病気や不調そのものよりも、それが気になってしまう心に問題がある。例えば飛蚊症は、何かに夢中になっている時には気にならない。人との心の通ったコミュニケーションの最中には気にならない。充実した時間を送っているときは、一日中気にならないこともある。だが本人が満たされていないと、それは途端に意識の大部分を占めるようになる。人格が整い、ナルシシズムから抜け出すことで、人はトラブルから感じるストレスを小さくすることができる。大病に冒されても、それを健全に受け止めて対処することができるようになる。それはまるで、凝りをほぐして体の柔軟性を高めると、枕や布団は変わっていないのに寝心地が良くなることと同じである。心の柔軟性は、ナルシシズムによって失われ、こだわりという「凝り」を生じる。この凝りをほぐしていくことが、ナルシシズムに冒された人が生きづらさから解放されていくための正しい道である。我々は皆、心理的に最後は硬い床の上で裸で寝なくてはならなくなる。それは老いることで不健全な自己愛満足供給路を全て失った状態である。その時、どのくらい人との関わりから健全に自己愛を補給できるかで、硬い床の上での寝心地は天国にも地獄にもなりうる。