傷つきの回避戦略

ナルシシズムがもたらす人との摩擦による傷つきに対する戦略は人それぞれである。ある人は傷つきから逃げることで心の平穏を得る。回避性パーソナリティである。それは情緒の交流による本質的な自己愛満足を放棄し、人との関わりを必要としない自己愛行動により自分を満たそうとする。人生の価値が情緒的交流にあるとすれば、それは人生への期待を棄てた行動とも言える。そういう人は一時的には逃げても良いが、もっと人生に期待して、人との関係に敢えて飛び込んでいく選択ができることを知っておいて損はない。逃げるという選択肢を手にした上で、楽園を探してみればよいのだ。それには多少の勇気、そして人格の整った他者の助けが必要になる。またある人は、他者に尽くすことで承認を得ようとし、自己愛を満たそうとする。依存性パーソナリティである。自己愛を人との関わりにおいて満たそうとする点では一歩進んでいるが、その関わり方はやはり不健全な自己愛満足を得るやり方である。彼らはありのままの自分でも他者から承認されるということを知らない。承認依存症の彼らは人との関わり方を根本的に改めることで健全な自己愛満足を得ることができるようになるだろう。またある人は傷つきに鈍感になり、不足する健全な自己愛満足を放棄せずに他のもので補おうとする。自己イメージを肥大/固定させ、それを追求しイメージに自己を重ねることで自己愛を満たそうとする。自己愛性パーソナリティや強迫性パーソナリティである。強迫性パーソナリティは人との関わりよりも自分の行動の完遂、目的の達成、完璧を優先してしばしば他者との関係を破壊する。幻想追求型の人間である自己愛性パーソナリティは賞賛依存症であり、他者から承認されるであろう主観的な「イメージ」を自分勝手に作り出し、不健全な自己愛満足のために他者を巻き込み、自己の行動を他人との良好な関係構築に優先させてしまう。

結局、人が本質的に満たされるためには、どんな不健全な自己愛行動も他者との情緒的交流に優先して行ってはならないのだ。すべての不健全な自己愛行動は、他者との良好な関係構築の手段やきっかけ以上の意味を持たない。どれだけ夢中になって取り組んでいることでも、ひとたび親友に話しかけられたら中断しなくてはならない。中断したいという気持ちになるのが健全な人間の心の動きである。