感情と人生の密度

感情に彩られた人生というのは最も幸福で密度のあるものに感じられるだろう。感情には正の感情とともに負の感情があるが、その両者ともそれを素直に感じ、表現することで人生が彩られる。悲しみや寂しさを素直に感じ表現することは、嬉しい体験ではないが人生を豊かにする体験である。未熟な親の元で育った子供は、人生早期に主として負の感情を表現する機会を抑圧される。それは親から押し付けられたファサードであり、ナルシシズムである。「泣くようなマネは許さない」「反抗してはいけない」「はしゃいではいけない」といった親の子供に対する理想イメージの押し付けが、子供から自分の感情を理解し、それに浸る能力を奪い取る。怒りの抑圧は屈辱体験となって蓄積する。度重なる屈辱体験による傷つきに耐えられない彼らは、感情から距離を置くことでそれに対処しようとする。感情そのものを拒絶することで、その人は傷つきから自らを守る。だが負の感情だけから距離を取ることはできず、その人は同時に正の感情からも距離を置かざるを得ない。このことがその人の人生密度を著しく低下させてしまう。感情を表現できなくなった彼らは情緒的なコミュニケーションができなくなる。情緒的交流の不足は基本的自己愛の不足による不全感をもたらす。その不全感を埋めるため、彼らはやがて不健全な自己愛満足の追求に解決を見出す。