信念を正しく定めて結果を待つ

医療においては、正しいと考えられる標準診療を実践しても、ときに患者を失うことがある。その際にその結果を受け入れることができるのは正しい信念を持って診療に当たれている人である。信念のない結果主義者は眼の前の患者を救おうとして手を尽くすが、実はそれがナルシシズムであることには気づいていない。厄介なのは、傍目から見るとナルシシストの医療は非ナルシシストのそれよりも人道的に見えてしまうことがある点である。本当に信念のある医療は、患者の喪失が避けられないことを了承している。そしてその喪失にも関わらず診療をぶらさずに続けることが容易にできる。喪失は彼らにとって自らの信念をより良いものに改善する機会ではあるが失敗ではない。ナルシシストにとって患者の死は失敗であり、避けなくてはならないものである。

人生もこれと全く同じである。正しい生き方に確信を持ち、そのように生きる。経験する人間関係や社会生活上のトラブルは、自分の生き方が正しいものであるかどうかを見直させてくれる材料になる。個々のトラブルはネガティブな体験かもしれないが、それは失敗ではない。信念が正しく設定されていない人にはトラブルが多く降りかかる。それを修正していき、人生の後半にかけてトラブルが減ってくるようなら、その人の信念は洗練され、人格は成熟していっていると考えてよい。トラブルそのものをその都度回避しようとしていては生き方には一貫性が出ない。一貫性のない人生には充実感が伴わない。あくまで生き方を一貫させ、そこにどの程度困難が生じるかで自分を振り返るのである。