空虚さと記憶、感情

ナルシシストの人生がなぜ空虚に感じられるのか。記憶は感情と結びついている。強烈な感情を伴う場面は深く記憶に刻まれる。感情を喪失した者は、感情と紐づいた記憶を持つことができない。ナルシシストにあるのはナルシシズムの傷つきの記憶ばかりだ。そのため負の感情に紐づいた屈辱体験や不満体験ばかりが蓄積している。彼らは喜びに溢れた体験や、悲しみに暮れた体験を強い感情とともに体験し蓄積できない。だから人生が薄っぺらく、中身のない、不満に満ちたものとして体験される。彼らの記憶は幼い頃の家庭での屈辱体験、戦慄の体験に始まる。それが彼らから感情への正常な反応能力を奪い、以降の人生での喜びの体験を不可能にし、記憶を薄っぺらいものにしてしまう。旅先での美味しい食事も、きれいな景色も、好きな人と一緒にいる時間も、彼らは深く体験することができない。彼らはこれ以上生きることで、人生がますます豊かな体験の記憶で満ちていくことが想像できない。彼らにとって生きることは屈辱体験や不満体験の蓄積を意味する。そのような者が人生に絶望し、自ら死を選ぶのは当然ではないだろうか。彼らが死を選ばなかったときには、引きこもることによって他者との関係から身を引き、傷つくことを極力避ける。