自己評価とナルシシズム

「できない自分への怒り」というのも、「幻想的世界観の中の自分」に現実の自分がマッチしていないことへの不満から起こる。「自己評価が低い」というのは、言葉を換えればそれだけナルシシスティックだということになる。「自己評価が低い」というよりも「現実の自分」と「イメージする自分=幻想の中の自分」との乖離が大きいという話なのだ。そもそも自己評価というものを設定している時点で現実とは異なる何らかの幻想を抱いていることになる。幻想の自分が現実の自分より「劣っている」人はほとんどいないだろう(例外は「自傷的自己愛」とよばれるものだ)。であるから、健全な心の持ち主に「自己評価が高い」という人は実はいないと言える。自己評価が現実よりも高いとすれば、それは幻想に浸っているナルシシストが、現実よりも誇大な自己にしがみついている状態であろう。自己評価が低い者と現実の自分が見えている者が自己を向上させようとするとき、両者の努力は根本的に異なる。前者は幻想を追求するナルシシスティックな努力、後者は現実的な努力により自己を向上させる。前者の目的は現実を幻想に一致させることにあり、過程よりも結果を重視する。一方後者にとって結果である現実は常に目の前にあるので結果追求は意味を成さず、彼らは常に過程を重視する。