ナルシシズムの本質

岡野憲一郎氏のいう、「自分が軽んじられたという感覚が怒りを生む」という自己愛の傷つきについての解説。これはナルシシズムをかなり本質に迫る形で説明しているように思える。だがより本質的な表現は、「『自分が欲する世界』と『眼の前の現実』が乖離している」という感覚ではないだろうか。より簡潔に表すなら、「自分の持つ幻想が崩された」という感覚だ。自分が軽んじられるという感覚を持つということは、自分についてのある程度固定したイメージ、幻想を持っているということに等しい。自分が欲する世界をイメージしていることも、同様に世界についての固定したイメージ、幻想をもっているということであり、それ自体が程度こそあれナルシシスティックな性格を表している。相手の行動について怒りを感じることが健全である唯一の状況は、後述のより基本的な自己愛、すなわち眠気や空腹の解消、感情の表出が妨げられたときや、相手の行動が自分の「健全な生きる姿勢」について介入してこようとする場合だけだ。親切にすることや明るく振る舞うことを信条にしている人に対して、それが外部に害を為している訳ではないのにその信条を非難することは自尊心への不当な攻撃と言える。「人を傷つける言動」というのはこうした「健全な姿勢への批判」のことを指している。こうした目で見れば、健全な自尊心を持った人でも怒ることはある。ただしそれはその人の基本的自己愛や、健全な自由意思が損ねられるような場合においてのみ起こる。